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  • (暮らしの豆知識)

病気と上手く付き合おう(05) <てんかんについて>

わが子の愛らしい寝顔を見つめながら、「ずっと健康でいてほしい」と祈るような気持ちでつぶやいた経験のある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
一方で、体質や遺伝が原因となったり、加齢に伴って起こったりする病気もあり、予防や完治が難しい病気もたくさんあります。
我が家のどうぶつが病気になったとき、少しでも良い状態で過ごせるよう、しっかりと支えてあげたいですね。
そのためには、動物病院での処置や治療はもちろん大切ですが、食生活などの普段の生活環境が重要な役割を果たします。
そこでお世話をされる飼い主さんとどうぶつが、病気と上手くつきあうために大切なことを紹介いたします。
今回は「てんかん」についてご案内いたします。

どんな病気?

てんかんとは、発作的に繰り返される全身性の痙攣(けいれん)や意識障害を主な症状とする脳疾患です。
てんかんというのは病気の名前で、てんかん発作はてんかんの症状にあたります。

症状

てんかん発作には「全身性の発作(大発作)」と「意識が消失しない軽度な発作(小発作、もしくは部分発作)」があります。
発作の前兆としてみられたり、発作としてあらわれたりする症状には、次のようなものが挙げられます。
・落ち着きがない。
・口をクチャクチャさせる(チューインガム発作)。
・よだれが出る。
・手足や顔面等の一部に痙攣を起こす。
・全身痙攣を起こす。
・意識を失う(意識消失)。
・後ろにのけぞり、四肢を突っ張るような状態になる(後弓反張)。
・手足を無意識にバタバタさせる(遊泳運動)。
・一定の所で自分の尾を追いかけながら、くるくる回る(テイルチェイシング)。

発作中には、尿や便を漏らしてしまうこともあります。
発作が起きると一時的に意識がなくなることもありますが、通常は数秒〜数分で終わり、その後は何事もなかったように過ごします。
重度になると、短い間隔の発作を何度も繰り返したり、発作が長く続いたりする(てんかん重積発作)ことがあります。

原因

どうぶつがてんかん様の痙攣発作を起こす場合、次のような原因が考えられます。
◇特発性(真性)てんかん
脳の異常を伴わずに起こる原因不明のてんかんです。遺伝的素因が関与するといわれています。
◇症候性てんかん
脳腫瘍、脳炎、水頭症、外傷による脳障害などの脳疾患に伴って起こる後天性のてんかんです。
◇潜因性てんかん
症候性てんかんが疑われるものの、各種検査上明らかな異常が認められないものを潜因性てんかんといいます。
◇非てんかん
脳以外の異常(電解質異常、低血糖、肝障害、腎障害、中毒、低酸素など)に起因して発作がみられることがあります。この場合は、発作の原因となっている疾患の治療を行います。

治療

特発性てんかんでは「抗てんかん薬による発作のコントロール」が主な治療となりますが、症候性てんかんの場合には、「状況に応じた、発作の原因となっている疾患の治療」が必要な場合もあります。したがって、てんかん様の発作が起こった場合、原因が何であるかをはっきりさせるための精密検査を行っておくことが望ましいといえます。
検査内容は、歩く様子・反射などをみる神経学的検査や血液検査、心臓の機能検査を行い、状況によってはMRI検査や脳波検査が必要となります。
薬物代謝に影響を及ぼす肝臓や腎臓の機能なども、薬物療法開始前に血液検査等で評価しておくことが重要です。
投薬量に関しては、適正な量で効果が出ているのかを確認するため、薬物の血中濃度を測定しながら決める場合もあります。

てんかん治療の重要性について

てんかん発作は脳の神経細胞の過剰な興奮によって起こりますが、その影響で発作性の脳損傷が起こることが指摘されています。
つまり、てんかん発作が起きることで脳が損傷を受け、さらにてんかん発作を起こしやすい状態になってしまう可能性があるということです。
反復性のてんかん発作は、そのままにしておくと徐々に発作の頻度と重症度が増加してくる傾向があり、患者さんのQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、治療が難しくなる可能性があります。
なるべく発作を起こさないようにするための薬物治療は、このようなことを防ぐためにもたいへん重要です。

治療の開始時期について

「発作の状況がどの程度になったら治療を開始するか」について、明確な基準がある訳ではありません。
それぞれの患者さんやご家族の状況を考慮した上で、かかりつけの先生が判断することになりますが、一般的には次のようなことを治療開始の目安とすることが多いようです。
1.1ヶ月に1回以上、もしくは3ヶ月に2回以上の発作がみられる。
2.3ヶ月に1回以上の発作がみられ、その間隔が短くなってきている。
3.1回の発作が30分以上続いたり、意識状態が完全に回復する前に次の発作を起こしたりする。
  (てんかん重積発作)
4.1日に2回以上の発作がみられる(群発発作)。

看護のポイント1 投薬について

原因不明のてんかん発作を完全に防ぐことは難しいといわれていますが、発作の回数を減少させたり、発作の持続時間を短縮させたり、発作の程度を軽減するためには、抗てんかん薬でのコントロールが、たいへん重要です。投薬を開始したら、必ず指示通りにきちんと薬を飲ませるようにしましょう。
抗てんかん薬にはさまざまな種類があり、使用する薬剤によりその影響も異なってきますが、多くの薬に共通して見られる副作用として、沈うつ、歩様異常(ふらつき)、多飲多食、肝障害などがあります。
抗てんかん薬を使用するときは、副作用が少ない分量で、有効に発作を抑えていく必要があります。
獣医師は現在の投薬量と効果の程度、副作用の出現等を総合的にみながら、それぞれの子に必要な薬の種類と投薬量を検討していきます。
また、副作用を最低限に抑えるために、定期的な血液検査や薬物の血中濃度の測定が必要な場合があります。
きちんと指示どおりに投薬が行われていないと、最適な治療法を選択できなくなってしまう可能性があります。
投薬中は定期的に通院し、かかりつけの先生の指示に従うようにしていただき、さまざまな事情でどうしても指示通りの投薬が難しい場合には、かかりつけの先生にきちんとお伝えいただくことが重要です。

抗てんかん薬による治療で発作の症状がコントロールされ、発作が全くみられなくなるようなケースもありますが、抗てんかん薬による治療は、あくまでも症状を抑えてコントロールするものであり、てんかんそのものを治療し、根治させるためのものではありません。
薬を減らしたり、止めたりすることができるケースも中にはありますが、生涯投薬が必要になるケースもあります。
症状が現れなくなっても、独断で投薬を中止せず、必ずかかりつけの先生に相談するようにしましょう。

看護のポイント2 発作時の対応

てんかん発作時は普段の様子とは違う状態になり、「意識をなくす」、「もがく」など、どうぶつが苦しんでいるように見える様子に胸が痛くなってしまいます。
ただ、意識を失っている間は、どうぶつは痛みや苦しみは感じていないといわれています。できるだけ落ち着いて、冷静に対応してあげましょう。

◇発作が起こったら・・・
1.発作中に高い所から落ちたり、周りのものにぶつかったりして怪我をしないように注意をしましょう。
周囲の状況を確認し、ぶつかりそうなものはその場から退け、柔らかい毛布やクッションなどを置くなどして安全を確保しましょう。
2.発作中のどうぶつに触れたり大きな声で呼びかけたりすると、さらに刺激を与えてしまい発作を長引かせてしまうことがあります。
安全が確保できたら、できるだけどうぶつには触れず、静かに見守るようにしましょう。

◇次のような点を観察し、記録しておきましょう。
・発作の前兆はなかったか。(「鼻をならす」、「そわそわする」など)
・発作が体のどの部分から始まったか。
(「ピクピクと顔を引きつらせてから始まった」、「全身のけいれんから始まった」など)
・発作がどのくらい続いたか。
・発作の時、意識があったか。
・舌の色が青かったり白かったりする場合には、心臓病や貧血など、他の疾患による発作の可能性もあるため、できれば舌の色を確認する。
・発作が治まった後の様子。
・どのくらいの時間で元の状態に戻ったか。
※携帯電話の動画やビデオなどで発作の様子を撮影しておくと診断の参考になります。

◇発作がおさまったら
発作がおさまると、すぐにケロッとする場合もありますが、しばらくの間ボーッとしたり、フラフラした状態が続いたりすることもあります。
静かに落ち着ける場所で休ませてあげて下さい。
自分に何が起こったのか、一番不安に思っているのはどうぶつ自身です。
飼い主さんが不安な表情や動揺した様子をみせると、よけいに不安が強くなり、緊張してしまいます。
大きな声で呼びかけたり、揺さぶったりしないで、飼い主さんはとにかく落ち着いて、元の状態に戻ってくるまで、優しく静かに見守ってあげてください。

発作の時間が短時間、1回きりで落ち着いている場合には、通常は緊急に治療を受ける必要はありません。
あわてて病院に駆け込むことでどうぶつに過度の緊張を与えて、発作が誘発される場合もありますので、しばらくは家でゆっくり様子を見てあげた方が良いでしょう。
落ち着いてから一度受診し、発作の状況や発作が続いた時間などを伝えて、検査や今後の治療について主治医の先生と相談をしましょう。

◇すぐに受診が必要な発作
・発作が10分以上続く。
・意識が戻らないうちに次の発作が起こる(てんかん重積発作)。
・呼吸が苦しそうな状態が続く。
・舌の色が悪い(青かったり白かったりする)。
万が一大きな発作が起こった時に、お家で対処するために、発作を抑える座薬などを常備しておくこともありますが、このような薬を使用しても抑えられない場合も注意が必要です。
上述のような症状が見られる場合には命に関わることも考えられますので、速やかに病院に連絡をお取りいただき、受診をなさって下さい。
また、万が一かかりつけの病院の休診時に具合が悪くなったときのため、救急対応をしていただける病院を事前に探しておくことが望ましいでしょう。

看護のポイント3 発作の記録をつけよう

てんかん発作には、さまざまな環境要因が関係していることもあります。
特定の気象条件で発作が起こりやすくなることや、「花火やお祭りの音を聞いた」、「郵便屋さんや宅配のお兄さんが来た」、「家族が留守にして帰宅した後」など、緊張を誘発する特定の出来事に関連して発作が見られることもあります。
てんかん発作に関係する環境要因としては、このほか、食べ物や発情、寝不足や体調不良などもが挙げられます。
そのような環境要因をできるだけ排除することで、発作の頻度や投薬量を減らすることができる場合があります。
また、発作が起きることを事前に予測することで適切に対処できる可能性があります。
「どのような要因が発作に関係しているか」という可能性を知るために、発作の時の様子と併せて、発作が起こった日の天候や出来事、体調等を記しておくと、参考になります。

看護のポイント4 健康状態の観察ポイントと病院のかかり方

発作の頻度が数ヶ月に1回程度に落ち着いていて発作時間も短い場合には、発作の度にあわてて病院を受診しなければならないということはありませんが、薬を服用している場合には、血中濃度の測定や副作用の評価のために定期的に血液検査等が必要ですので、
主治医の先生の指示に従って定期的に受診するようにしましょう。
ただし、次のような兆候が見られる場合には、すぐに受診し、治療方法を再検討していただいた方が良いでしょう。
・以前に比べて発作の頻度が高くなってきたとき
・発作の持続時間が長くなった、発作後の回復に時間がかかるなど、以前の発作と様子が変わってきたとき
・1回の発作が30分以上続いたり、意識状態が完全に回復する前に次の発作が起こったりする状態
 (てんかん重積発作)や1日に2回以上の発作(群発発作)を起こしたとき
・食欲不振、胃腸障害、沈うつ、歩様異常(ふらつき)、多飲多食などの薬の副作用と思われる症状が見られるとき

てんかんはさまざまな意味で飼い主さんのご負担が大きい病気であり、看護する上でいろいろ大変なこと、ご心配なことも多いと思いますが、
どんなときも、最も頼れる存在である飼い主さんがどっしりと構えてくれていることが、ワンちゃんの大きな心の支えとなります。
発作が起こってもあわてずに、静かに、暖かく、落ち着いて見守ってあげましょう。

アニコムでも、てんかんと闘うどうぶつと、支える飼い主さんが少しでも穏やかに暮らせる方法を見つけるお手伝いを一緒にさせていただければと思います。
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