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  • (暮らしの豆知識)

どうぶつのターミナルケア(9) 自宅で行うケア <痛みでつらそうだったら>

がん、関節疾患、椎間板疾患、炎症性疾患などの多くの疾患が痛みの原因になりますので、ターミナル期のどうぶつは痛みを抱えている場合があります。がんが骨転移を起こしたり神経を圧迫したりしたときの痛みは強く感じられるようですし、寝たきりの状態が続くことに伴う褥創(じょくそう=床ずれ)の痛み、筋肉が痩せたり関節がこわばったりすることによる痛み、消化管の動きが悪くなるために起こる腹痛などを抱えている場合もあります。

痛みの治療について

 

どうぶつは痛みを感じても言葉で伝えることはできません。また、自己防衛のためなのでしょうか、本能的に痛みを隠そうとしますので、痛みがかなり強くなるまで、外見上の大きな変化はみられない傾向があります。そのため、どうぶつが痛みを感じているかどうかを的確に評価するのは難しいのですが、痛みを感じているときには、次にあげるような行動や仕草の変化(「痛みのサイン」)が多くのどうぶつに見られるといわれています。適切な時期に効果的な痛みの治療を始められるよう、日常生活の中のささいな変化を見逃さないようにしましょう。

 

■どうぶつの痛みのサインの例

  ◇のろのろと歩く、跛行(はこう)が見られるなど、歩き方がおかしい

     ◇体に触れると体をこわばらせたり、鳴いたり、うなったりする

  ◇体の一部をしつこくなめたり噛んだりしている 

  ◇怒りっぽくなる、イライラしている、無気力になるなど、性格の変化が見られる

  ◇背中を丸めた姿勢をしている  ◇寒くないのに震えている

  ◇呼吸が荒い     ◇トイレを失敗する     ◇食欲が落ちる  

     ◇いつもより元気がなく動きたがらない    

  ◇好きなことに興味を示さない      ◇表情が暗い  

 

痛みを抱えるどうぶつは、食欲をなくしたり、睡眠がとれなくなったり、動かなくなったりすることで、体力や筋力が落ちて、衰弱し病気と闘う力を失くしてしまいます。また、持続する痛みは、「血圧が上がる」、「脈拍や呼吸が速くなる」など、体に生理的な悪影響を及ぼす場合もありますし、長期間にわたって痛みを我慢していると、痛みの感覚に過敏に  なったり痛みが増幅されて、より強い痛みとして感じるようになってしまいます。その結果、鎮痛剤が効きづらくなり痛みの治療が困難になってしまうことがあります。 

このように、痛みはどうぶつのQOL(quality of life:生活の質)を著しく低下させてしまいますから、「痛み対する治療を適切に行うこと」は、ターミナルケアで最も重要なことといえます。

今では、痛みの多くは「早期から適切な治療を受けることで緩和することができる」といわれており、痛みの治療はできるだけ早期に始めることが勧められています。

痛みを緩和させる治療には、非ステロイド系抗炎症剤、非麻薬性オピオイド鎮痛薬、麻薬性オピオイド鎮痛薬(モルヒネなど)などの薬物を、痛みの程度に応じ選択して使用します。

このような鎮痛薬の他、鎮痛薬の効果を高めたり鎮痛薬で抑えきれない痛みに対する補助的な鎮痛効果を得たりする目的で、各種の鎮静剤や抗けいれん薬や局所麻酔薬などを併用することも あります。これらの薬物には、注射薬や経口薬(飲み薬)、座薬(肛門などから挿入する固形の外用薬)、貼り薬など、さまざまな形態がありますので、主治医の先生と相談しながら最も合った方法を見つけてあげましょう。

痛みを和らげるために自宅でできること

1.寝床の工夫

痛みを抱えるどうぶつは、どうしても寝たり休んだりする時間が多くなりますので、寝床の環境は重要です。老齢のワンちゃんに夜鳴きが見られたときに、ベッドの素材を変えただけで夜鳴きが軽減するケースも見られますが、これは夜鳴きの原因が寝ている時の痛みによるものであり、素材を変えたことで痛みが和らいだのではないかと考えられます。

ベッドの素材が硬すぎると、腰や関節に負担がかかり痛みの原因となることがあります。頻繁に寝返りをうたないと褥創ができやすくなりますし、ずっと同じ姿勢で寝ていると筋肉や 関節がこわばり、それらも痛みの原因となります。

適度な柔らかさのある素材のベッドを利用し、自分で寝返りをうてない場合には定期的に寝返りをさせ、姿勢を変えてあげるようにしましょう。また、関節を優しく曲げ伸ばしするなどして関節や筋肉がこわばらないようにしましょう。

特定の姿勢を取ったときに痛みが起こったり、強くなったりする場合もあります。どうぶつが嫌がる姿勢は避け、クッションなどを利用して、快適な姿勢が保てるように工夫していただくのも良いでしょう。

 

2.さする

お腹が痛い時や足や手をぶつけたときに、「痛いところをさすることで痛みが和らいだ」という経験をしたことのある方は多いと思います。この「痛いところをさすると痛みが和らぐ」ということには、次のような科学的な根拠があります。

痛みの情報は、体のあちこちに分布している「感覚を伝える神経」を通って脊髄に送られ、そこから脳へと伝達されます。感覚を伝える神経には細い神経と太い神経があり、細い神経は痛みを、太い神経は触覚(さする刺激)や圧覚(押す刺激)などを伝えます。

脊髄には痛みの信号を送る量を調節するゲート(門)がありますが、触覚や圧覚などの太い神経からの刺激があると、ゲートを閉じて痛みを伝える細い神経からの刺激を伝わりづらくするように働きます。そのため、痛いところをさすると痛みの刺激が脳へ伝わりづらくなり、痛みが和らぐのです。これは「ゲートコントロール説」と呼ばれています。

言葉を話さないどうぶつが「どこを痛がっているのか」ということを知るのは難しい場合もありますが、さすったときに気持ち良さそうにする部位を見つけて、ぜひさすってあげて下さい。

大好きな飼い主さんにさすってもらうことは、ただそれだけでも嬉しいことのはずです。

ただし、状況や場所によっては、触ることによる刺激を過度に与えない方が良い場合もあります。   判断に迷う場合には、主治医の先生に相談してから行うようにしましょう。

 

3.温める

痛みがあると筋肉が緊張します。筋肉が緊張すると血流が悪くなり、痛みのもととなる物質や 老廃物がたまりやすくなり、さらに痛みを引き起こします。温めることには、筋肉の緊張をほぐし、血液の流れを良くして痛みのもととなる物質や老廃物を取り除きやすくするという効果があります。

痛いところを温めるためには、温タオルや市販のホットパック、カイロ、温灸などを利用する方法があります。こんにゃくやあずきを利用してホットパックを手作りするという方法もあるようです。

ただし、いずれの場合も低温ヤケドに注意しましょう。

腹痛や腰痛を起こしやすいどうぶつには、嫌がらなければ腹巻などをしてあげても良いでしょう。

気温の低い時期は、寝床が冷えないようにする工夫も必要です。

なお、炎症の急性期(腫れや赤み、熱感がある場合など)には温めるよりも冷やすことが必要です。判断に迷う場合には主治医の先生に相談してから行うようにしましょう。

 

4.マッサージ

ワンちゃんやネコちゃんにもマッサージをすることができます。マッサージをすることは、上述の「さする」や「温める」と同様に、血液の流れを良くし痛みを軽減する効果が期待されます。また、大好きな飼い主さんにマッサージをしてもらうことは、どうぶつの精神的な安定のためにも効果があるでしょう。ただし、痛みが強い場合や部位によっては、マッサージをされることや触れられること自体を嫌がることもあります。そのような場合には無理をしないようにしましょう。

ワンちゃんでしたら、ワンちゃんの好む香りの精油(エッセンシャルオイル)を使って、アロママッサージをしてあげるのも良いでしょう。ただし、ネコちゃんとアロマオイルは相性が悪く、中毒を起こす可能性がありますので、ネコちゃんへの精油(エッセンシャルオイル)やマッサージオイルの使用は避けるようにしましょう。

ワンちゃんに利用する際にも、「人では良いが、ワンちゃんには避けたほうがよいタイプの精油ではないか」、「どのくらいの希釈濃度であれば問題ないか」等を確認するなど、十分にご注意ください。

 

5. 喜ぶこと、気持ち良さそうにすること

好きなことに熱中していたり楽しい気分のときは痛みを忘れ、疲れていたり気分が落ち込んでいるときには痛みを強く感じる、といったことを経験したことがある方は多いと思います。痛みの感じ方は、心や体の状態によってずいぶん変わってくるものです。

一般的に人の痛みの感じやすさに影響を与えるのではないかとされている心や体の状態は次のようなものです。

 

◇痛みを感じやすいときの状態 

・悲しい ・寂しい ・怖い ・不安を感じる ・落ち込んでいる ・イライラしている 

・疲れている ・よく眠れない ・不快感がある  

◇痛みを感じづらいときの状態

・楽しい ・うれしい ・気持ちが良い ・リラックスしている ・心が穏やか

・何かに熱中している ・よく眠れる ・よく休息がとれる

 

このようなことは、ワンちゃんやネコちゃんなどのどうぶつでも同じだと考えられています。

どうしたら喜ぶか、気持ち良いと感じるか、リラックスできるかを探してあげましょう。

気分転換になるような遊びに誘ってあげるのも良いでしょう。

快適で安心して休むことができる環境を作ってあげることも大事なことです。

何より、どうぶつは飼い主さんの笑顔が大好きです。病状への心配や心と体の疲れからどうしても笑顔を忘れそうになってしまいますが、そんな飼い主さんの様子を見て、ワンちゃんやネコちゃんは不安になってしまうかもしれません。

大好きな飼い主さんの元気な笑顔をたくさん見せてあげましょう。

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