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遺伝性疾患と発症が多いおもな犬種

遺伝性疾患とは、遺伝子に変異が起きて引き起こされる病気のことです。変異した遺伝子は、親から子へ引き継がれることによって病気も引き継がれていくのです。
純血種のどうぶつでは、限られた地域の中で、同じ品種のどうぶつの繁殖を繰り返すことにより近親交配が進み、変異した遺伝子が固定され、その犬種の発症しやすい遺伝性疾患となります。

遺伝性疾患には、「単一遺伝性疾患」、「多因子遺伝性疾患」などがありますが、基本的に遺伝子検査で変異の有無を判別し診断ができるのは「単一遺伝性疾患」です。
現在、様々な遺伝子検査が行われるようになり、動物病院ですでに発症している病気の確定診断に用いられています。また、子が遺伝性疾患を引き継ぐことを予防する目的で、繁殖に供するどうぶつの検査に用いることもあります。

進行性網膜萎縮症(PRA)

眼の組織である網膜が進行性に変性萎縮することにより、視力が低下し最終的には失明 する眼の疾患です。初期では、夜のお散歩時など暗い所で見えづらそうな様子(=夜盲)がみられ、次いで日中の視覚も失い最終的に失明します。多くの場合、物につまずく、ぶつかるなどで視力の低下に気づきます。二次的に白内障を併発することもあります。犬種により発症の時期や症状などは様々です。日本ではミニチュア・ダックスフンドに非常に多いのが特徴ですが、好発犬種以外の、どの犬種でも発症する可能性があります。

◇好発(※)犬種
■ダックスフンド(ミニチュア) ■プードル(トイ、ミニチュア)■シーズー 
■シュナウザー (ミニチュア) ■アメリカン・コッカー・スパニエル   
■ラブラドール・レトリーバー  ■パピヨン 
■ヨークシャー・テリア

※好発とは発生頻度が高いことをいいます。疾患が発生しやすい犬種が好発犬種です。

遺伝性白内障

眼のレンズの役割を担う水晶体が白濁して、視力が低下する眼疾患です。進行すると視力を失います。加齢に伴い起こる白内障とは異なり、遺伝的素因により発症します。遺伝性白内障の発症年齢は、生後数ヶ月から数年というように犬種により様々です。進行性網膜萎縮(PRA)のような別の遺伝性眼疾患に伴って発症する場合もあります。

◇好発犬種
■プードル(トイ) ■ボストン・テリア ■フレンチ・ブルドッグ 
■ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア ■アメリカン・コッカー・スパニエル
■キャバリア・キングチャールズ・スパニエル ■ビーグル ■ブル・テリア

コリーアイ、コリー眼異常(CEA)

網膜と結膜の間にある脈絡膜(みゃくらくまく=毛細血管が分布して酸素や養分供給などを行う眼の組織)の形成不全、視神経乳頭の周りにある既存の血管から分岐する新たな血管(=血管新生)、あるいは血管の蛇行や網膜の出血・剥離(はくり)などを特徴とする遺伝性の眼疾患です。重症例では生後4週齢から2ヶ月齢という若齢期に進行し、視力障害による行動異常がみられたり、失明に至ることもあります。
中には1歳以降で発症し、ほぼ進行しない場合もあります。

◇好発犬種
■ボーダー・コリー ■コリー(ラフ、スムース)■オーストラリアン・シェパード ■シェットランド・シープドッグ

フォンビルブランド病(vWD)

止血の重要な因子であるフォンビルブランド因子(vWF)の量的な低下・欠損・機能異常により凝固障害が起こる止血異常症です。外傷時にみられる過度の出血、鼻出血や 口腔内出血、血尿等といった粘膜からの異常な出血がみられます。
フォンビルブランド因子の量的な低下が原因で止血異常を起こす「タイプ1」と質的な異常が原因で止血異常を起こす 「タイプ2」、フォンビルブランド因子が完全に欠損することで止血異常を起こす「タイプ3」に分けられます。「タイプ1」はほとんど無症状ですが、「タイプ3」はフォンビルブランド因子が完全に欠損しているために重篤な症状を示します。日本においては、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークに「タイプ1」が多く認められています。

◇好発犬種
■ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ■バーニーズ・マウンテンドッグ 
■ドーベルマン・ピンシャー ■シェットランド・シープドッグ    
■プードル(トイ、ミニチュア、スタンダード)■スコティッシュ・テリア 

イベルメクチン中毒

脳の毛細血管では血液脳関門というバリア機能が働き、血液中の異物や薬物の侵入を防いでいます。このバリア機能をコントロールしている遺伝を「MDR1遺伝子」といいます。この「MDR1遺伝子」に変異があるとバリア機能が正常に働かず、特定の薬物の使用によって中毒を引き起こすことがあります。コリー系のワンちゃんには、「MDR1遺伝子」に変異がある場合が多いことが知られています。
ワンちゃんによく使用するフィラリア予防薬のイベルメクチンは、このような中毒を起こす可能性のある薬物の代表例です。フィラリア予防のために使用する投薬量は比較的少量であるため、副作用が出る可能性も低いと考えられますが、疥癬(かいせん)や毛包虫症(=アカラス)の治療のために使用する場合には高用量になるため、注意が必要です。症状は、散瞳、沈うつ、振戦(しんせん=意思とは関係なく筋肉郡が交互に細かく震える様子)、盲目、運動失調、呼吸低下、昏睡などがみられ、死に至ることもあります。
事前の検査でこのバリア機能が正常に働いているかどうかを調べることにより、安全に投薬できるかどうかを知ることができます。

◇好発犬種
■コリー(ラフ、スムース)■シェットランド・シープドッグ ■ボーダー・コリー
■オーストラリアン・シェパード ■ジャーマン・シェパード

銅蓄積性肝障害

銅の排泄機能に障害が生じて肝臓に銅が蓄積することにより肝臓を損傷し、肝炎が起こる疾患です。特に症状はなく、血液検査の肝酵素などの異常によって気付く場合もあります。進行すると体重減少、食欲不振、多飲多尿、下痢、嘔吐などの症状が認められます。重篤になると黄疸、腹水、肝性脳症や溶血性貧血が認められることもあります。銅蓄積により引き起こされた肝炎は肝繊維症を起こし、肝硬変から肝細胞癌へと進行する場合もあります。

◇好発犬種
■ベドリントン・テリア

シスチン尿症

本来腎臓で再吸収されるシスチン(アミノ酸の一種)が再吸収されずに、尿中に排泄される遺伝性疾患の一つです。シスチンの尿中への排泄が増加すると、腎臓や膀胱でシスチン結石が形成されることがあります。結石により膀胱炎や尿道閉塞を引き起こすと、腎不全や膀胱破裂で死に至る場合もあります。

◇好発犬種
■ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ■イングリッシュ・ブルドッグ
■バセット・ハウンド ■ニューファンドランド 

【常染色体劣性遺伝腎症(FN)】

基底膜の構成成分であるⅣ型コラーゲンが不足することにより、腎臓の機能が低下する 疾患です。症状としては、体重減少、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、貧血などを呈し、慢性腎不全から尿毒症になり死に至る場合もあります。病気の進行は遺伝的体質により大きく異なります。2歳頃までに慢性腎不全を発症し、急速に進行する場合もあります。
◇好発犬種
■イングリッシュ・コッカー・スパニエル 

腎嚢胞腺癌(じんのうほうせんがん)

腺上皮にできた原発性の腫瘍が蓄積して嚢胞状になります。5~11歳頃に食欲不振、体重減少、多渇(たかつ=喉が渇いて異常に水を飲みたがる)などの症状がみられます。
この病気は結節性皮膚繊維症と呼ばれる全身性の皮膚結節を併発することが多く、さらに女の子では多発性の子宮平滑筋腫を併発することがあります。腫瘍細胞の浸潤(しんじゅん)の度合いは様々で、局所的な増殖や転移を起こします。

◇好発犬種
■ジャーマン・シェパード

骨形成不全症

骨組織を構成しているコラーゲンの異常により全身の骨密度が低下し、非常に骨折しやすい状況になる疾患です。そのため、わずかな外力によっても容易に骨折しやすくなり、多発性骨折を起こす場合があります。骨折すると癒合(ゆごう)も悪く、変形をきたして湾曲(わんきょく)してしまうこともあります。ダックスフンドの骨形成不全症はコラーゲンの異常ではなく、コラーゲン結合蛋白の異常が原因と言われていますが、同様の症状を示します。

◇好発犬種
■ビーグル ■ゴールデン・レトリーバー ■ダックスフンド

X染色体連鎖筋ジストロフィー

進行性に筋力が低下していく筋疾患です。遺伝子の変異により、筋細胞の構造を支えるたんぱく質であるジストロフィンが欠乏したり機能異常を起こしたりすることにより、骨格筋の変性や壊死を引き起こします。X染色体連鎖劣性遺伝であるため男の子に発病します。通常2ヶ月齢頃に発育不良、歩き方や姿勢の異常、疲れやすい等の症状が現れます。また流涎(りゅうぜん=唾液が口から流れ出ること)や嚥下(えんげ)障害などもみられるようになります。6ヶ月齢頃までに筋力の低下がみられるようになり、転びやすくなります。さらには起立が困難になり、四肢の筋肉が萎縮して固くなり、後肢を抱え込むように丸くうずくまるという特徴的な姿勢をするようになります。さらに呼吸障害を呈し、心不全で2歳頃までに死に至ります。

◇好発犬種
■ゴールデン・レトリーバー

先天性筋緊張症

骨格筋の「電位依存性塩素イオンチャネル遺伝子」の異常により、筋肉が一旦収縮すると弛緩するのに時間がかかり、筋肉が硬直した状態になる疾患です。歩様異常、流涎、嚥下障害などの症状を示します。

◇好発犬種
■シュナウザー(ミニチュア)■チャウチャウ

発作性睡眠(=ナルコレプシー)

オレキシンは、覚醒レベルを高めたり、情動や緊張状態を保ったりする脳内の神経伝達物質です。発作性睡眠(=ナルコレプシー)は、このオレキシンの受容体が変異することにより、脳脊髄中に伝達されず、脱力発作を引き起こす疾患です。オレキシンが伝達されないことにより、突然虚脱状態に陥り、起立不能になったり睡眠状態を引き起こしたりします。ワンちゃんの場合、興奮したり喜んだりといった強い感情の変化に伴い、全身または膝や腰などの姿勢を保つ筋肉が突発的に弛緩する脱力発作(=カタプレキシー)が見られます。発作は両後肢から起こる傾向があり、次に両前肢や頸部にみられ、重症例では全身に至るケースもあります。ワンちゃんの発作性睡眠(=ナルコレプシー)は遺伝病として原因遺伝子が特定されていますが、非遺伝性(=弧発性)のタイプもあるといわれています。

◇好発犬種
■ダックスフンド(ミニチュア) ■ラブラドール・レトリーバー 
■ドーベルマン・ピンシャー    

重症複合免疫不全症

細胞性免疫をコントロールするリンパ球の一種であるT細胞が機能不全に陥ることにより引き起こされる疾患です。生後6~8週齢で母犬から受け継いだ免疫が落ちるため、細菌やウイルスに感染し易い状態となります。多くの場合、抗生物質などの治療に反応しないのが特徴的です。膿皮症や歯肉炎、口内炎など感染症の悪化により2~4ヶ月齢で死亡します。

◇好発犬種
■ジャック・ラッセル・テリア ■ウェルシュ・コーギー・カーディガン      
■バセット・ハウンド

白血球粘着不全症(CLAD)

白血球の一つである好中球は、病原体を貪食(どんしょく=異物を取り込む現象のこと)する能力が高く、病原体の体内への侵入を防ぐ細胞性免疫で重要な役割を担っています。白血球粘着不全症は、この好中球の働きを助ける物質であるオプソニンが欠損しているため、免疫機構に異常が起こる疾患です。徐々に進行する傾向があり、生後数週間の幼犬期の頃から歯肉炎、関節の炎症による全身性の痛み、難治性の湿疹などが見られます。多くの場合は6ヶ月齢ほどの早期に死亡します。

◇好発犬種
■アイリッシュ・セッター 

周期性好中球減少症(グレーコリー症候群)

グレー、シルバー等の特定の毛色のコリーにみられる疾患です。造血機能障害が認められ、細胞性免疫を担っている白血球の一つである好中球が減少することにより、最終的には感染により死に至る疾患です。11~13日周期で造血抑制がおこり、全系統の血球が減少しますが、その中でも最も寿命が短く、ライフサイクルの早い好中球の減少が顕著に確認されます。通常、生後2~6ヶ月齢で発症し、発熱、結膜炎、元気・食欲の低下、関節炎や関節の痛み、下痢、歯根炎などを呈し、多くの場合感染症により数ヶ月齢で死亡します。

◇好発犬種
■コリー ■ボーダー・コリー 

ホスホフルクトキナーゼ欠損症

赤血球内に含まれる酵素の欠損により赤血球の寿命が通常より短く、血管、脾臓などで赤血球が破壊され溶血性貧血が起こる疾患です。血管内溶血が起こると、尿中に血色素が排出される血色素尿や黄疸もみられます。

◇好発犬種
■イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル ■アメリカン・コッカー・スパニエル  ■イングリッシュ・コッカー・スパニエル ■ウィペット 

ピルビン酸キナーゼ欠損症

赤血球のエネルギー代謝に必要なピルビン酸キナーゼの欠損により、赤血球の寿命が短くなり貧血をきたす疾患です。生後6ヶ月齢頃までに発症し、貧血がみられたり、赤血球に含まれる鉄の組織への沈着(ヘモジデリン沈着)による肝不全が起きるなどで多くは4歳齢頃までに死に至ります。

◇好発犬種
■バセンジー ■ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア ■ビーグル 
■ケアーン・テリア

ライソゾーム病

細胞内にある小器官の一つであるライソゾームでは様々な分解酵素により老廃物の処理を行っています。しかし、酵素の欠損や異常によって、ライソゾームの分解機能がうまくいかず、本来分解されるべき物質が蓄積してしまう疾患を総じて「ライソゾーム病」と呼んでいます。細胞小器官の一つであるゴルジ体の酵素が欠損するために、酵素がライソゾームに転送されない疾患(=糖蛋白代謝異常症)も含みます。
欠損している酵素により病名や症状が異なり、数十種類の病気がありますが、そのうちの幾つかを次にご紹介します。

1.セロイドリポフスチン症(CL症)

進行性の運動障害、知能低下、視覚障害、行動異常を起こす神経変性疾患です。中枢神経系や諸臓器の細胞にリポピグメントという脂質色素が蓄積し、細胞が 変性することにより起こります。生後約1歳半頃から2歳頃までに発症します。段差を踏み外したりするなど運動能力の低下が認められ、視覚障害、行動異常、てんかん発作などが徐々に進行し、多くは2歳半頃までには死に至ります。
◇好発犬種
■ボーダー・コリー ■イングリッシュ・セッター ■ダックスフンド(ミニチュア)   ■アメリカン・ブルドッグ

2.GM1ガングリオシドーシス

細胞小器官(=細胞内で機能を有する構造体)の一つであるライソゾーム内酵素の欠損 あるいは異常低下により、通常では代謝されるべきGM1ガングリオシドが中枢神経系に蓄積し、全身の臓器にケラタン硫酸やオリゴ糖が蓄積して神経症状や運動失調を起こす疾患です。若齢で発症し、異常行動、さらには麻痺や四肢の緊張性硬直が悪化し起立不能になり、角膜の混濁による視覚障害も起こります。1歳前後で寝たきりになり、多くの場合、生後1歳半頃までには死亡します。

◇好発犬種
■柴犬 

3.グリコーゲン貯蔵症(糖原病)

肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを分解する酵素が欠損し、体の様々な部位に異常な グリコーゲンの蓄積が起こる遺伝性の疾患です。蓄積はおもに、肝臓、腎臓、心臓、筋肉、中枢神経系で起こり、嘔吐、進行性の全身性筋虚弱、肝臓が大きくなる(=肝腫大)、腎臓が大きくなる(=腎肥大)、巨大食道症、高脂血症などの症状がみられます。また、血糖値が低下し、痙攣(けいれん)や神経症状を引き起こし、起立困難になる場合もあります。
 
◇好発犬種
■マルチーズ  ■ポメラニアン

4.ムコ多糖症タイプⅢA

ライソゾーム内の加水分解酵素の欠損や異常により、ムコ多糖類の一種であるグリコ サミノグリカン(GAG)が蓄積してしまう遺伝性の代謝性疾患です。グリコサミノグリカン(GAG)の蓄積により、体や精神の発育不良、骨や軟骨の形成障害、水頭症などを引き起こします。運動失調、臓器障害、痙攣(けいれん)発作などの症状がみられます。

◇好発犬種
■ダックスフンド

5.α-フコシドーシス

遺伝的にα-フコシダーゼという酵素が欠損することにより、オリゴ糖や糖蛋白質が 体内に蓄積し、運動失調、嚥下障害、視覚異常などの神経症状がみられる疾患です。固有位置感覚(=床に足の甲を着けた時の感覚)の消失、多発性の骨異常、顔つきの変化などの症状を呈することもあります。

◇好発犬種
■イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル        


みなさんからのコメント

かいさんのトイプードルちゃんからのコメント
左後ろ脚が生後10ヶ月ころから引きずり 現在は宙に浮いたり引きずり歩きます!遺伝病と診断を受けショックで 余命一年と宣告されました、助けたい!
かいさんのトイプードルちゃんからのコメント
左後ろ脚が生後10ヶ月ころから引きずり 現在は宙に浮いたり引きずり歩きます!遺伝病と診断を受けショックで 余命一年と宣告されました、助けたい!

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