分子遺伝学的に解明された遺伝性疾患
| 疾患名 | 概要 / かかりやすい犬種 |
|---|---|
| 進行性網膜萎縮症 (PRA) |
目の組織である網膜が進行性に変性萎縮することにより視力が低下し、最終的には失明する眼の疾患。初期は夜盲症様の症状がみられる。物につまづいたり、ぶつかったりすることで視力低下に気づくことが多い。二次的に白内障を併発することがある。犬種により発症の時期や症状などは様々。 ・ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ・トイ・プードル ・ミニュチュア・ダックスフンド ・キャバリア・キングチャールズ・スパニエル ・アイリッシュ・セッター ・ゴールデン・レトリーバー ・イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル ・シェットランド・シープドック ・ラブラドール・レトリーバー ・シーズー ・パピヨン ・アメリカン・コッカー・スパニエル ・イングリッシュ・コッカー・スパニエル ・チワワ ・ビーグル ・ボーダー・コリー ・シベリアン・ハスキー ・ペキニーズ ・ノルウェジアン・エルクハウンド ・マルチーズ ・ゴードン・セッター ・ミニチュア・シュナウザー ・秋田犬 ・ミニチュア・ピンシャー ・ヨークシャー・テリア など |
| セロイドリポフスチン症(CL症) | 進行性の運動障害・知的障害・視力障害、行動異常を起こす神経変性疾患。脳内の酵素が先天的に欠損しているため、細胞代謝の際に発生するセロイドリポフスチンが蓄積することにより、神経細胞(特に脳細胞)を圧迫し、ダメージを与えるために起こる。生後約1.5ヶ月までは傍目には正常にみえるが、2歳頃までに発症し、急速に症状が進行して3歳頃までには死に至る。 ・ミニチュア・ダックスフンド ・ボーダー・コリー ・アメリカン・ブルドッグ ・イングリッシュ・セッター など |
| フォンビルブランド病(VWD) | 止血の重要な因子であるフォン・ビルブランド因子(vWF)の量的な低下や欠損、機能異常により凝固障害が起こる血液疾患。外傷等による過度の出血や、粘膜の出血が異常におこることによる鼻出血や口腔内出血、血尿等がみられる。 ・ミニチュア・ダックスフンド ・ゴールデン・レトリーバー ・ミニチュア・シュナウザー ・プードル(トイ、ミニチュア、スタンダード) ・ラブラドール・レトリーバー ・柴犬 ・ヨークシャー・テリア ・パピヨン ・ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ・シェットランド・シープドック ・バーニーズ・マウンテンドック ・ドーベルマン・ピンシャー ・スコティッシュ・テリア ・マンチェスター・テリア など |
| イベルメクチン中毒 | 血液中の異物や薬物の侵入を防ぐため、脳などの中枢神経には脳血液関門が存在するが、この機能に障害があるため、脳血液関門のガードシステムが働かなくなる疾患。コリー系の脳血液関門の働きは弱いケースが多く、脳に作用するタイプの薬物や異物が脳内に到達すると症状を引き起こす。一般的なフィラリア予防薬であるイベルメクチンを脳血管関門のガードシステムに障害を持つ個体に投与すると急性中毒症状を引き起こし、重症の場合は死亡する。 ・コリー ・シェットランド・シープドック ・オーストラリアン・シェパード など |
| GM1ガングリオシドーシス | 細胞小器官(細胞内に存在し、機能を有する構造体)の一つであるリソソーム内の酵素に欠損があるため、中枢神経系に通常では代謝されるべきGM1ガングリオシドが蓄積し、全身の臓器にケラタン硫酸やオリゴ糖が蓄積して神経症状や運動失調を起こす疾患。異常行動、さらには麻痺や四肢の緊張性硬直が悪化し起立不能になる。角膜の混濁による視覚障害も起こる。1歳以降には寝たきりになり、生後1歳半頃には死亡する場合が多い。 ・柴犬 など |
| コリーアイ、コリー眼異常(CEA) | 眼の組織である脈絡膜(網膜と結膜(白目の部分)の間にあり、毛細血管が分布し、酸素や養分供給などを行う組織)に形成不全、視神経乳頭の周りの血管新生(既存の血管から新たな血管が分岐すること)や血管の蛇行、網膜の出血や剥離がみられるなど、眼の異常な発育を特徴とする眼疾患。特に重症例は、生後4週齢から2ヶ月齢という若齢期に進行する傾向にあり、視力障害による行動異常が見られたり、失明に至ったりする事もある。1歳齢以降で発症するものは、ほぼ進行しない場合が多い。 ・ボーダー・コリー ・コリー ・オーストラリアン・シェパード ・シェットランド・シープドック など |
| 常染色体劣性遺伝腎症(FN) | タイプⅣコラーゲンが不足することによって腎臓の機能が低下する疾患。症状としては、体重減少、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、貧血などを呈し、慢性腎不全から尿毒症になり、死に至る場合がある。病気の進行は遺伝的体質により大きく異なり、5歳齢頃までに、腎不全になる可能性があるが、1歳齢頃に症状を現す場合もある。 ・イングリッシュ・コッカー・スパニエル など |
| ピルビン酸キナーゼ欠損症 | 赤血球のエネルギー代謝に必要なピルビン酸キナーゼの欠損により、赤血球の寿命が短くなり貧血をきたす疾患。生後6ヶ月齢頃までに発症し、貧血やヘモジデリン沈着による肝不全がおこり、多くは4歳齢頃までに死に至る。 ・バセンジー ・ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア など |
| 発作性睡眠(ナルコレプシー) | 脳内の伝達物質であるオレキシンが不足していたり、オレキシンの受容体に変異があることで、脳脊髄中にオレキシンが伝達されず脱力発作を引き起こす疾患。オレキシンは覚醒レベルを高めたり、情動や緊張状態を保つ物質であるが、このオレキシンが伝達されないことにより、突然、虚脱状態に陥り、起立不能になったり睡眠状態が引き起こされたりする。発作は、両後肢から起こる傾向があり、次に両前肢や頸部にみられ、重症例では全身に至るケースもある。 ・ミニチュア・ダックスフンド ・ゴールデン・レトリーバー ・ラブラドール・レトリーバー ・ドーベルマン・ピンシャー など |
| (遺伝性)白内障 | 眼のレンズの役割をしている水晶体が白濁し視力が低下し、進行すると視力を失う眼疾患。2歳までに起こるものを若齢性白内障、2~6歳に起こるものを成犬性の白内障と呼ぶが、これらの若くして起こる白内障は加齢で起こる白内障とは異なり、遺伝的素因による。 ・キャバリア・キングチャールズ・スパニエル ・フレンチ・ブルドック ・ミニチュア・ダックスフンド ・パピヨン ・トイ・プードル ・ボストン・テリア ・スタッフォードシャー・ブル・テリア ・アメリカン・コッカー・スパニエル ・アフガン・ハウンド ・狆 ・パグ など |
| シスチン尿症 | 本来、腎臓で再吸収されるべきシスチン(アミノ酸の一種)が、正常に腎臓で再吸収されず腎臓や膀胱で結石を作ってしまう泌尿器疾患。結石により膀胱炎や尿道炎を引き起こし、また排尿障害を引き起こすこともある。進行すると、腎不全や膀胱破裂で死亡する場合もある。 ・ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ・ニューファンドランド など |
| 腎嚢胞腺癌/結節性皮膚繊維症 | 胎児期の腎臓形成時に多発性腎嚢胞を起こし、腎機能の障害を引き起こし、腺上皮に腫瘍を起こす疾患。5~11歳頃に食欲不振、体重減少、多渇を呈する。また、結節性皮膚繊維症と呼ばれる全身性の皮膚結節を併発する例が多い。さらに雌では多発性の子宮平滑筋腫を併発することがある。 ・ジャーマン・シェパード など |
| ムコ多糖症タイプⅢA | リソソームは細胞内で消化作用を行うが、加水分解酵素の欠損や異常により、ムコ多糖類の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)が蓄積してしまい、成長が阻害されてしまう代謝性疾患。グリコサミノグリカン(GAG)が蓄積していくことにより、体や精神の発育不良、骨の変形、水頭症などを引き起こす。運動失調、臓器障害、知能障害などの症状がみられる。 ・ダックスフンド など |
| 重症複合免疫不全症 | 細胞性免疫をコントロールしているT細胞に先天的な異常が生じることにより、免疫不全が引き起こされる疾患。免疫不全により細菌やウイルスに感染し易い状態となり、慢性的な消化器症状を呈して栄養不良となり、感染症の悪化により死亡することが多い。 生後数ヶ月にわたって生存することはほとんどない。 ・ジャックラッセル・テリア ・ウェルシュ・コーギー・カーディガン ・バセット・ハウンド など |
| X染色体連鎖筋ジストロフィー | 筋細胞膜に存在するジストロフィンが、遺伝子の異常により欠乏したり、機能異常を起こしたりすることにより筋繊維の変性・壊死を引き起こし、進行性の筋力低下を呈する運動器疾患。X連鎖劣性遺伝をとるため雌のみに発症する。生後6ヶ月を過ぎた頃から筋力の低下が見られるようになり、転びやすくなる。さらには起立が困難になり、四肢の筋肉が萎縮して固くなる。更には開口障害や呼吸障害を呈し、心不全で死亡する。 ・ゴールデン・レトリバー など |
| 骨形成不全症 | 骨組織を構成しているコラーゲンに障害が生じ、全身の骨の成長が重度に低下してしまい、外傷は無くても、多発性骨折を引き起こす疾患。四肢の骨が細く、非常に骨折しやすい状況になる。骨折を繰り返すことにより、高度の変形をきたし、湾曲してしまう場合もある。 ・ビーグル ・ベドリントン・テリア など |
| 白血球粘着不全症(CLAD) | 血液中の白血球には好中球、リンパ球など数種類があり、好中球は病原菌を貪食し、細胞性免疫で重要な役割を担っている。この好中球の働きを助ける物質をオプソニンという。、このオプソニンが欠損しているために、免疫機構に異常が起こる疾患でこの疾患は徐々に進行する傾向がある。生後8~14週齢頃の乳歯脱落期にかけて歯周の炎症が起こり、開口が困難になる。さらに、関節の炎症を起こし、ふらつきや全身性の痛みを呈し、起立困難となる。早期に死亡するケースが多い。 ・アイリッシュ・セッター など |
| 周期性好中球減少症(グレーコリー症候群) | 毛色がグレー、シルバーのコリーにみられる疾患。造血機能障害がみとめられ、細胞性免疫を担っている白血球の一つである好中球が減少することにより、最終的には感染により死に至る疾患。11~13日周期で造血抑制がおこり、全系統の血球が減少するが、そのうち最も寿命が短く、ライフサイクルの早い好中球の減少が顕著に確認される。通常2~6ヶ月齢で発症し、発熱、結膜炎、元気・食欲の低下、関節炎や痛み、下痢、歯根炎などを呈する。通常、感染症により数週齢~数ヶ月齢で死亡する。 ・ボーダー・コリー ・コリー など |
| グリコーゲン貯蔵症(糖原病) | 肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを分解する酵素が欠損し、さまざまな部位にグリコーゲンが蓄積することにより痙攣などの神経症状を引き起こす疾患。蓄積は主に、肝臓、腎臓、心臓、筋肉、中枢神経系で起こる。また、血糖値が低下し、痙攣や神経症状を引き起こし、起立困難になる。他にも、嘔吐、進行性の全身性筋虚弱、肝腫大、腎肥大、巨大食道症、高脂血症などの症状がみられる。 ・マルチーズ ・ヨークシャー・テリア など |
| 先天性筋緊張症 | 筋肉の収縮が過度に長く続き、弛緩をするまでに時間を要したり、困難が伴う疾患を筋緊張症といい、筋肉のこわばりや嚥下困難などの症状を示す。食べたものをすぐ吐き出してしまう吐出症状や起立困難、呼吸困難などの症状を呈し、寒さや興奮、運動により症状が悪化する。 ・ミニチュア・シュナウザー ・チャウチャウ など |
| ホスソフルクトキナーゼ欠損症 | 赤血球内に含まれる酵素に合成障害がおき、赤血球が破壊されやすくなって溶血性貧血が起こる疾患。赤血球が破壊されるため、尿中に血色素が排出される血色素尿もみられる。 ・イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル ・アメリカン・コッカー・スパニエル ・イングリッシュ・コッカー・スパニエル など |
| 銅蓄積症 | 銅の排泄機能に障害が生じ肝臓に銅が貯蓄することにより、肝臓を損傷し、肝炎が起こる疾患。さらに肝臓に貯蓄できない銅は脳や眼などの器官にも運ばれ蓄積されるため、神経症状や精神不安を引き起こす。また銅蓄積により引き起こされた肝炎は肝繊維症を起こし、肝硬変から肝細胞癌へと進行する場合もある。 ・ウエストハイランド・テリア ・ベドリントン・テリア など |
| α-フコシドーシス | α-フコシダーゼという酵素の働きが低下することにより、オリゴ糖や糖蛋白質が蓄積し、運動失調、嚥下障害、視覚異常などの神経症状がみられる疾患。固有位置感覚の消失、多発性の骨異常、顔つきの変化などの症状を呈することもある。 ・イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル ・アメリカン・コッカー・スパニエル ・イングリッシュ・コッカー・スパニエル など |






