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「実は、もう一頭買っているのですが、その子はs/d※1をずっと食べているんです。」
私は、びっくりしました。s/dというのは、アルカリ尿※2でできやすいストラバイト※3という石を溶かすために開発されたご飯で、おしっこを酸性にします。おしっこを酸性にしすぎると今度は逆に酸性尿でできやすい石ができてしまうので慎重に食べさせないといけません。また、おしっこをたくさん作ってもらうために塩分がとても多いので、ずっと食べていたら心臓や腎臓に負担がかかってしまいます。私は思わず、
「検査してもらったほうがいいと思いますよ。」
とお話しました。
結局、その日のうちに来院され、私が検査をさせて頂くことになりました。心不全がみられ、膀胱と腎臓に石が発見されました。子宮蓄膿症※4の手術が必要だったので、その時一緒に膀胱の石を取り出してみると、酸性尿でできる石ができてしまっていたのです。s/dを食べ続けるには、もっと念入りなモニターが必要であったはずなのに、薬と違ってご飯であったため、獣医も飼い主さんもそれほど慎重にならなかったのかもしれません。
ご飯であっても、「療法食」は薬と同じように獣医のアドバイスが必要です。
日常食として年齢にあわせてあげた方がいいものと、日常食としては適さないものとがあります。様々な病気に対してそれぞれに、よく考えられた栄養特性を備えたフードが用意されているのです。たとえば、腎臓病用のご飯なら、腎臓がタンパクからできた窒素化合物をうまく排泄できないので、タンパクを制限してあります。例え腎臓が悪くても、タンパクが制限されているので成長期の子犬ちゃんには適しません。よくよく病気を理解して、その時のその子の状態にあったものを決められた量だけあげるようにして頂く必要があります。療法食が、もっとどうぶつ達の健康でハッピイな生活に役立てますように。 まだまだ始まったばかりの分野です。
| ※1: |
ヒルズという会社で製造されている動物病院でしか手に入らないフードの一種。 |
| ※2: |
アルカリ性のおしっこ。pH6〜7は正常範囲であるが、それ以上の場合をアルカリ尿、それ以下の場合を酸性尿という。 |
| ※3: |
日本名は、リン酸アンモニウムマグネシウム。 |
| ※4: |
子宮に膿が溜まる病気。妊娠を経験していない未避妊の雌犬に多い病気。 |
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